2012年4月20日金曜日

(第40号)『朝日の迷い』

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 最近、朝日新聞の論調に、ある種の"迷い"(ブレ)が見られることは、つとに指摘されているが、本日(4/20)付の朝刊は、その典型であった。
なかほどのオピニオン欄で、丸々1ページの全面を割いて、
「老いゆく中国」
と題して、中国社会科学院・人口労働経済研究所長の蔡ボウ(ツァイ・ファン)氏のインタビューを掲載していた。
「急速な高齢化で中国の労働人口が減るので、2020年以降は、高度な経済成長は無理」
という氏の持論が展開されているものである。
この主張自身は、実は目新しいものではなく、2007年頃から、日本のメディアにも、氏の「人口経済論」は、しばしば登場している。
(過去に他のメディアに出た部分も一部含めて)内容をたどってみると、

「中国の働き手(生産年齢人口:15~59歳)は、2013年頃をピークにして、減少に転じてしまう(一人っ子政策の影響)」
「一人あたりのGDP(国内総生産)は、まだ日本の9分の1程度であり、国民が豊かになる前に、社会負担の重い高齢化社会に突入してしまう。中国にとって大変な試練だ」
「農村人口は六億五千万と、今や全人口の半分以下に減ってしまった。賃上げをしなければ、農村からの出稼ぎ労働者すら確保できない」

とくに最後の点は、
「中国の都市部の人口と農村部の人口が逆転したとき(=農村部の人口が半分以下になったとき)、中国の自由化・民主化は必然のものとなる」
という、約10年前の大川隆法総裁の"予言"との関係で言えば、重要な"告白"だろう。
さらに、「一人っ子政策」を見直しても人口が増えない理由として、

「日本や韓国、台湾などと同じです。高い教育を受けた女性は、なかなか結婚しないし、出産の時期も遅くなるから」

と指摘し、人口減にもかかわらず、若者の失業率が上がっている原因として、

「学校の教育内容と企業の求める人材の間に隔たりがあるからで、これが年六百万人の大卒者の就職難を産み出している」

と、日本の文科省にも聞かせたいような、率直な見解を披露(ひろう)していた。
それに加えて、

「(先行きの自然成長率は期待できないのだから)無理やり高い成長率を維持しようとして、淘汰(とうた)すべきゾンビ企業を助けたりするようなことは、するべきではない」
「そもそも中国は、都市と農村部の戸籍を分けていて、都市部に出稼ぎに来た農民が、同じような教育・医療・年金が受けられないようにしている。(社会主義国家でありながら、差別が存在している。)こういうことを改めないといけないのだ」
「今の中国の問題は、都市部と農村部の名目上の賃金格差が縮まったのに、貧富の差が、実感としては逆に、広がっていることだ。
それは、賃金以外の見えない待遇に差があるからで、特権を利用して、対象外の収入を得ている人が沢山いることを、皆が知っている」
と、かなりはっきりした"政府批判"を展開していた。

 さて、このロング・インタビューを掲載した朝日新聞の意図をどう読むか。
最近とみに、「覇権国家・中国」への批判が各方面から激しいので、
「そんなことはないんだよ。中国も、「あっという間に老人大国に転落して国力が衰退しそうだ」というので、彼らも大変なんだ。苦労しているんだよ」
と、批判の矛先(ほこさき)をかわすのに、朝日新聞も一役買っているようにも見える。
あるいは、ここまで親中路線で世論を引っ張ってきたものの、最近の東南アジアや尖閣諸島に対する中国の覇権的・侵略的スタンスに、段々恐くなってきて、
さすがにマズイと思ったのか(このまま付き合ったら一蓮托生(いちれんたくしょう)にされるので)、上手にアリバイ作り(足抜けのためのリスクヘッジ)に取り掛かったように見えなくもない。
そのいずれの場合であれ、今回のインタビュー記事は、「相手(中国政府)の弱点」を知る上で、手頃な教材になる。
今年の夏以降は、「中国の自由化・民主化」に向けて、いよいよ知力戦が本格化するだろう。
その際の普遍の真理が、
「敵を知り、己れを知れば、百戦危うからず」(『孫子』より)
であることを考えれば、なおさらだろう。



                         「北朝鮮」、「温暖化」と的(まと)が外れて



 この日の朝日新聞には、ほかにも面白い記事があった。
先般のミサイル発射実験に当たって、北朝鮮政府は、海外のメディアを多数招いて異例の取材をさせたが、日本は主要なテレビ局、通信社は招かれたものの、新聞社は、朝日を含めてすべてシャットアウトされた。
それに対する事実上の"抗議"を兼ねた「北朝鮮のメディア対応に関する検証記事」が掲載されたのである。
その中で、北朝鮮政府が「大幅な取材の自由を認めた」という公式見解とは裏腹に、いかに報道制限をかけてきたかを、系列のテレビ朝日の同行記者の言葉を借りて、連綿と"検証"しているのが、この記事の内容なのだが、
そこには、これまでの「好意」を無視された者の、何ともいえないペーソス(哀愁)が漂っているように見えた。
随分、北朝鮮政府の批判をしているようにも見えたが、それを言う資格は、朝日新聞にはないだろう。
「報道制限を課した」と朝日は主張するが、その割には、CNN等の欧米メディアは、随分大胆な報道をしていた。
朝日が取材を許可されたとしても、とてもではないが、CNN並みの"突っ込み"は期待できなかっただろう。(この点は、日本のテレビ局・通信社も同様である。)
デジタル社会の到来で、マスコミ(新聞/テレビ)に関する国の内外の障壁が、急速に無くなってきている。中国/北朝鮮報道に関する日本のマスコミの手抜き(あるいは"官報"化)は、どんどん読者・視聴者の目に晒されてきている。
今回の朝日新聞の"悲哀"は、ある種、それを象徴する出来事であった。

 さらに社会面に目を転じると、
「地球に低温期到来の可能性」
という、国立天文台・理化学研究所等の発表記事が掲載されていた。
「太陽の黒点活動等の影響で、来年から低温期に入ることが予見されてはいたが、それが、観測によると、一年早まりそうだ」
というのである。
温暖化問題に関する気象専門家の"いいかげんさ"(2年前にデータ捏造(ねつぞう)事件が発覚して国際問題化)と、近年の不況の深刻化があいまって、最近は、地球温暖化問題をまともに採り上げる人は、ほとんどいなくなったが、
「"太陽(黒点等)の活動による低温期と高温期の繰り返しの影響の大きさ"に比べれば、 "二酸化炭素が理論的にもたらす温暖化の影響"は、無視できるほど小さい」
ことは、地球物理学の方では以前から常識であり、それが、
「一部の狭い範囲の"気象学者"の声に便乗したマスコミによって、声高に叫ばれたのが温暖化問題の本質である」
ことは、良識ある人々の間では、良く理解されていた。
「2013年から低温期に入るらしい」
ということは、以前から分かっていたことだが、それがたまたま、国立天文台等の観測によって、
「一年早まったのが分かった」
ことを奇貨として、これもまたコッソリ「足抜き」をする(温暖化問題から距離を取る)というのは、やや"セコさ"を感じさせるものではあるだろう。
真実を探究してこなかった者の晩年には、ペーソス(哀愁)が漂うものである。
この国と人類の未来を安んずるために、朝日新聞の"回心"を期待したい。(了)

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